【氷河期世代支援】正規化では救えない、9 割の「正社員になりたくない」非正規労働者たち

就職氷河期世代に多い「非正規」や「引きこもり」の正社員化を目指す『人生再設計第一世代』集中プログラムを、今夏までに立ち上げるんだそう。

  1. やっと思い出してくれたの?まさに棄民
  2. この政策は「働き方改革」ではない
    • お荷物となる人間を減らしたい
    • 日本は “経済危機” にある
    • 行き先は地方の中小企業
  3. 政策の失敗は民の問題にすり替える
  4. 日本から「非正規」の言葉は無くならない
  5. 「非正規」にまつわる誤解と真実
    • 非正規=正社員になれない人?
    • 非正規は能力不足?
    • 「正社員」が身につけるもの
    • 能力に差が出る理由
  6. 非正規労働者の 9 割が望むこと
  7. 「正規化」よりもやるべきこと
    • 正社員の労働時間を短くする
    • “失敗しても良い社会” を作る
    • 働き方を選べる国に
  8. 参考サイト

1. やっと思い出してくれたの?まさに棄民

女性活躍推進、高齢者活用、外国人労働者の受け入れ、正社員の副業推進と来て、でもまだ全然人が足りず、「ああっそういえばロスジェネもいたんだった!」って・・・やっと思い出してくれたの?

40 代って年齢だけで選考自体から外される頃。晩婚化でまだ子育て真っ最中。これから介護も始まる。大企業では 45 歳以上のリストラも始まっている。そんな状況で、40代スキル無し非正規が、今更会社員になれと?大丈夫…?就職できても茨の道に感じる。

10年、いや20年手遅れに感じる。けど今からでも人生やり直せる人が生まれたら、それは幸せなことなのかな?

2.この政策は「働き方改革」ではない

諮問会議の資料には一見、「氷河期世代の救済」「働き方改革」っぽいことが書かれています。だけど、これは「働き方改革」と言うより「経済政策」。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019/0410/shiryo_02-1.pdf

内閣府 経済財政諮問会議 会議資料「就職氷河期世代の人生再設計に向けて」

動機はロスジェネ世代の「生活保護入り阻止のため」。そして日本の「人手不足解消のため」。日本にはそれだけ、おカネと労働者が足りないってことなんですね。真に我々の幸せのための対策ではない。


日本は “経済危機” にある

資料に名を連ねる 4 名の有識者の皆さんは「経済危機克服のための有識者会合」の面々。経団連会長や、プロ経営者、そして社会保障制度改革のために選ばれた二人の学者。

彼らが議論しているのは「ワーカー達の労働環境改善」ではなく、日本という組織を存続させるために、国の経営をどうするかです。働き方と経済はもちろん繋がっているので、経済政策に手を加えられると、後々私達の働き方にも反映されて来ます。

首相官邸 HP を見ても、この議論は「働き方改革」ではなく「アベノミクス」にカテゴライズされています。全く同じことが書かれている厚生省の資料もあるので、後ほど出しますね。

お荷物となる人間を減らしたい

「人生再設計」「職業訓練」「就職アドバイス」「リカレント教育」・・・

「スキルが無く」「正社員になれないから」「働くことを諦めている」人に手を差し伸べてあげよう、という内容。

何で上から目線・・・?「就職氷河期」は、企業が意図的に作り出したもの。言わば政策の失敗でしょうが。そしてレールの上に戻ろうとした人達が戻れなくなったのも、年齢で人を差別する企業側の勝手によるものでしょうが。早く新卒一括採用制度を廃止して、誰にでも等しくチャンスを与えたら良かったのに。

とはいえ「いつでも人生の再スタートを切れる社会」を作ること自体には、喜ばしいことです。

そして、過去を変えることはできない。「スキルが無く、働くことを諦めてもいる中年」は確実に国のお荷物となるので、頑張ってもらわなければ。正社員として拘束すれば、年金の財源もそれだけ確保できるし。それが国の本当の狙い。

行き先は地方の中小企業

先の厚生省の資料によると、「大企業は新卒志向が強く、新卒者も大企業志向が強い。だけど中小企業かつ若者に敬遠されがちな仕事なら、年齢でなく労働者本人の能力重視で採ってもらえるかも」ということらしい。

そして中小企業経営者による団体『中小企業家同友会』を通じてトライアル雇用に結びつけられたらいいよね、ってことが書いてある。

3.政策の失敗は民の問題にすり替える

「非正規」「就職氷河期」を産んだのは国と企業。だけど彼らはこの経済危機を救うため、一億人いる国民に協力してもらいたい。

「活躍」「正規化」と甘い言葉を使って国民を都合よく動かそうとしているけど、裏にある意図がミエミエ。そして自身の失敗を認めたり謝ったりは絶対にしない。

だけど大衆の皆さんは嘘が見抜けないから、いつもまんまと流されてしまう。そして方針に従おうとしない人を皆で叩きまくる。

4.日本から「非正規」の言葉は無くならない

この安倍さんの言葉、「世の中にある差別意識を無くす」というがゴールだと私は思っていた。でも、ちょっと違ったのかもしれない?

正規と非正規で待遇に差をつけたり、多様な働き方を認めたりして、”立場で差別されない社会” を作ること。そうやって、正規/非正規という”分け方“を無くすこと。それがゴールだと思っていた。

非正規で働く人を減らすのではなく、差別意識を無くさない限り、日本から「非正規」の言葉は無くならない。

5.「非正規」にまつわる誤解と真実

「正社員になりたくてもなれない」非正規労働者を対象とした本計画。その「不本意非正規」って一体、どのくらいいると思いますか?

非正規=正社員になれない人?

先に挙げた厚生省の資料に、「ロスジェネの 中で男性の 1 割、独身女性の 5 割が非正規。その中で 4 割が不本意非正規」と書かれています。

つまりロスジェネ全体で言うと、男性の 4%、独身女性の中で 20% が「不本意非正規」ということになりますね。

ところがいつの間にか条件が外れ、「4 割が不本意非正規」という数字だけが一人歩きしてしまうから、「そんなにいるんだ!と誤解する人が出て来ます。

役員を除く 雇用者に対する非正規雇用労働者の割合は、壮年男性(35~44 歳)が1割程度、壮年女性(35~44 歳) が5割程度で推移しています。

厚生労働省「就職氷河期世代の労働者への支援技法」

非正規雇用労働者として働く壮年男性、および無配偶者女性の4割程度が、現職の雇用形態につい ている主な理由として、「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答しており、不本意ながら非正 規雇用労働者として就業していると考えられます。

厚生労働省「就職氷河期世代の労働者への支援技法」

「既婚女性」は数から省かれていますが、その理由は明らかですね。家事・育児労働を一人で担わざるを得ない人がそれだけ多いということです。

特にロスジェネは、親が男尊女卑世代なんですよね。女性が家事と育児をし、旦那の世話をする時代に生きてきた人達なので、自分の娘にも完璧な家事・育児を求めて来ます。共働きのロスジェネ女性は親から相当なプレッシャーを受けているはず。

私も自分の親から「旦那に自分でスーツのブラシをかけさせるな」と怒られたり、旦那の親からも「旦那に任せておいたら、子供にお昼を食べさせていないのは仕方ない」と言われたりで、驚きました。

非正規は能力不足?

これと同じ内容が、以下の資料にも載っています。一般向けではなく、ハロワのキャリアコンサル向けの資料。

非正規雇用で勤務してきた労働者は、職業経験や能力開発機会に恵まれていないため、正社員として働くための技能やノウハウが不足していたり、正社員として求められる役割や能力を十分に理解していなかったりする可能性も考えられます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000491488.pdf

厚生労働省「就職氷河期世代の労働者への支援技法」

「非正規は能力不足」という憶測がここに・・・

あのー・・・

そもそも「非正規」と一括りにしていますが・・・

その能力はピンキリですよ?それにその辺の正社員と派遣社員の能力なんて、大して変わりませんよ?逆に正社員でできる人がいない仕事をしている非正規もいます。

「正社員」が身につけるもの

特定の会社で長く働いた人に身につくのは、「その会社に関する知識と、その会社での仕事のやり方」。それは転職したら通用しない能力だったりします。だけど、その箱の中だけで生きて来た人は気付きません。

畑違いの人が転職して来た時は、仕事のことをイチから教えますよね。新しく来た派遣の人や。社内から異動して来た人にも。

社内から異動して来た人と社外の人とで差が出るのは、「その会社のことをどれだけ知っているか」「その会社の中でどれだけ人脈があるか」。それはスキルではなく、経験し、続けることで自然と得られて行くもの。要は「慣れ」です。

非正規が正規になれないのは、スキルの問題というより「一度レールから外れると、戻れない」社会構造に拠る所が大きい。それと「同一労働同一賃金」が実現したおかげで、「非正規には雑用をやらせ、重要な仕事は任せない」よう徹底する企業が増えていそうなので、「慣れる機会」も減りそうですね。

能力に差が出る理由

ベルトコンベアに乗って待っていれば様々な教育を施してもらえる新卒と違って、非正規や中途採用は、実践と自習でスキルを磨かないとなりません。なので人によってかなり差が出ます。やる気と根性のある人のはトコトンやる。

「一般職」「総合職」のような、いわゆる「会社員」がいます。異動によって経験がほぼリセットになるような人達です。彼らのような「専門を持たない正社員」の場合、専門職の派遣社員の方がスキルが上のことがあります。能力開発機会にいくら恵まれていても、彼らは受け身だからです。もちろん会社員全員がそうだとは言っておらず、危機感と拘りがあるかどうかですよ。

仕事スキル以外の基本的なマナー部分は共通しているし、何よりマナーの前に大切なのはその人自身の性格。

部下を大勢抱えてのマネジメント、みたいな仕事はなかなか経験しにくい一面はあるかもしれません。が、派遣社員を取りまとめたり、人の教育をしたり、部署間の調整をしたり、といったコミュニケーションを学ぶ機会は、派遣でも結構多いと思います。

考え方の面でも、「なるべく深く、様々な立場を経験をする」ほど広い視点が身につきやすいので、「新卒から順調に地位が上がって行った人」が必ずしも良いリーダーになるわけではありません。「ずっと補助業務ばかりの人」や「ずっと同じ会社しか知らない人」も同じです。全体が見え、色んな人の立場に立って考えられる人こそが必要です。

結論。センスと心が大事。人は育ちます。

経験が長くても、センスや性格が悪い人っています。そういう人を無理に守るよりも、センスと性格が良い人を育てた方が絶対に得ですよね。周りの人に良い影響を与えることもできるし。

6.非正規労働者の 9 割が望むこと

人生再設計プロジェクトで救済される人の枠は、3年で30万人。総務省の統計では、”不本意非正規”は約50万人。これは主婦などの非労働力人口は約39万人、完全失業者が約36万人を除いた人数です。単純に計算した場合、この50万人なかなか6割の人達が、近い将来正社員になれるようです。おめでとうございます。

しかし氷河期世代は全体で約1,700万人。うち非正規労働者は約370万人強います。先ほどの主婦と完全失業者を入れると約445万人。30万人というと多そうに見えますが、実は全体の1割にも満たないのです。もっと言うと、残りの正社員で働いている人の中にも、生活費ギリギリで働いている人が大勢います。残された人達は一体どうなるのでしょう。私自身もその一人です。

総務省の「労働力調査 (H30)」の結果を見てください。非正規という雇用形態を選んだ理由で「正規の職員・従業員の仕事がないから」は、わずか 12% しかありません。そして、その割合は年々減っています残りの 9 割弱は「敢えての非正規」なんです(調査資料の 3 ページ目)。

ここに挙がっていない理由でよく聞くのは、「他の仕事を持っている」「病を抱えている」「正社員は人間関係など縛りがキツくて嫌」「住む場所が変わる可能性がある(旦那さんが転勤族だったり、旅をしたかったり)」など。人の数だけ事情があるんです

この調査結果からは、「自分らしい人生を実現しようとしている」人が年々増えていることも分かります。非正規が増えている根本原因は、「正社員という働き方ではワークライフバランスが取れない」ということにあるんですよ。先入観でものを言うのを止めましょう。

正社員になってしまうと、決められた時間帯に、決められた時間分、会社に居ることを求められる。それを外れたい理由があって、非正規になるしか無かった人が多いんです。極端な選択肢しか無いことが問題。

この傾向は変えられません。家事を全部やってくれ、子供の世話もしてくれていた「若い祖父母」と「嫁」がいた昔とは違うんです。もう、24 時間戦えない。それは個人のせいではない。時代が変わったんですよ。

7.「正規化」よりもやるべきこと

「正社員になりたくてもなれない」ごく一部の非正規への救済案は出されました。ですが、ワークライフバランスを取るために非正規となった残り 9 割の人々、そして正社員として長時間労働を続ける人々を救うために、やるべきことがあります。

正社員の労働時間を短くする

政府は、引きこもりの正規化だ、副業推進だ、女性活躍だと、私達奴隷の尻を叩きます。

私も「ひきこもりの非正規」と同じ。けど私が今困っているのは、「自分がやりたい仕事が、どの企業も『フルタイム・残業多め』の求人しか募集していない」、それと「東京・大阪・名古屋にしか仕事が無い」ということ。「仕事」「時間」「場所」を選びたいから、自分は正社員になることを選べない。

完全リモート勤務、1 日 7 時間勤務、週 3 正社員…多様な働き方を実現しようとする企業も現れて来ました。だけど、そういった働き方を選べる人はごく限られていて、そこだけキラキラして見えます。

同一労働同一賃金、副業(複業)、雇用関係によらない働き方が認められる世の中にして行くんですよね?それらが本当に実現して、更に皆が社会保険 (的なもの) にも入れるようにすれば、「正社員になるべき理由」って、薄れて行きませんか?

時間と体力の余裕が無いと、副業なんてなかなかできることじゃありません。代行サービスを利用できるだけの給料をもらっているか、家事・育児を手伝ってくれる時間と体力のある家族がいないと、子育てしながら働くのも難しい。それをしろと言うのなら、労働時間を短くしてくださいよ。

“失敗しても良い社会” を作る

自分の生き方を選んで良い社会にして欲しい。「フルタイム正社員が唯一の正解」とする風潮を変えたい。

「一日 3, 4 時間」とか「週 2, 3 日でもいいよ」「仕事に見合った給料を出すよ」と言ってくれるのなら、立場は何だろうと良いんですよ。

差別があるから「地位」が必要になる。セーフティネットが弱く、失敗できない社会だから、「安定」が必要になる。地位と安定を求める人達ばかりでは、国の産業も縮こまってしまいます。

働き方を選べる国に

もし本当に「氷河期世代のため」を思うのなら、正規化よりもシンプルに「労働者の給料を上げなさい」。

特に「扶養範囲内」の仕事は「短時間だけ働ける」ことをエサに、意味もなく他の同種の仕事より時給が低く設定されています。たとえ技能を持っていても、「短時間だけ働きたい」というだけで、搾取されてしまうのです。

本来、「フルタイム/パート」とは「時間」の違い。「正社員/非正規社員」とは「管理」の違いです。ところが人件費を払いたくない企業は、「仕事内容」で正社員とそれ以外の人を分けようとする。「正社員は重要な仕事をする人」「非正規社員は雑用をする人」の図式が出来上がって行きます。すると勘違いして威張り出すアホがいるので、そこに身分差別が生まれて来ます。

「同一労働同一賃金」に加え、本当は「不安定な仕事こそ高給」であるべき。「非正規という言葉を無くしたい」と言いつつ、正規雇用に拘っているように見えます。

正社員至上主義を何とかしない限り、差別が無くなることは絶対にありません。それに、優秀な若者に選ばれないような会社に人をねじ込んでも、この先その会社が生き残って行けるとは限らない。

大切なのは「正社員」という形態ではありません。続けたくなる仕事と給料、続けられる環境と、自分に合った働き方です。一つの正解に押し込めるのはやめて下さい。

時代は転換期に来ていると感じます。これからは、均一化された人を大量に会社や工場に押し込めるような働き方が、徐々にしっくり来なくなって行くはずです。

非正規を増やして行く流れ自体、そのうち海外みたいに契約で働いたり、人を解雇しやすくするのかと思いきや、足りなくなったらまた増やすだけ。結構ガッカリしました。

新しい技術を上手く使えば工数も人も減らせるはずなのに、現場は10年20年進歩がないまま、人手不足を迎えてから人だけ増やしたり。一体日本はどこへ行くのでしょうね。

8.参考サイト

データは以下サイトの H30 年のものを参考にしています。

http://www.stat.go.jp/data/roudou/

総務省統計局「労働力調査」

「防災」「G20」を除く政策の柱は、「アベノミクス」「働き方改革の実現」「一億総活躍社会の実現

http://www.kantei.go.jp/

首相官邸

経済財政諮問会議のこれまでの会議内容はこちら。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/

内閣府 経済財政諮問会議

働き方改革のうち、フリーランスのような “「時間・場所・契約にとらわれない、柔軟な働き方」は、働き方改革の「鍵」となる” と、経産省は言っている。

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/001_03_00.pdf

経済産業省「雇用関係によらない働き方」について(現状と課題)

非正規を「正規化」したいのは、厚生省。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/

更生労働省「正社員転換・待遇改善に向けた取組

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